ヴァン クリーフ & アーぺル展

六本木ヒルズ 森タワー前
六本木ヒルズ 森タワー前

新しい年が明け、再び、六本木ヒルズに行って参りました。森美術館と同じ53Fにある森アーツセンターギャラリーにて開催されていた、ヴァン クリーフ & アーぺル-ザ スピリット オブ ビューティー展です。展望を見る間もなく、いざ展覧会会場へ。入場口は、既に人・人・人、それだけ関心の高い展覧会なのだと改めて感じました。

フランスの5大高級宝飾店 グラン メゾンの中でも、ヴァン クリーフ & アーぺル社は一番新しく創立されました。宝石商の娘エステル アーぺルと、当時有名だった研磨技師一族の息子アルフレッド ヴァン クリーフ夫妻とエステルの兄シャルルが、協同でブティックをオープンさせたことが始まりです。1906年に、彼らは「ヴァン クリーフ & アーぺル」の名を商標登録し、パリのヴァンドーム広場に店舗をオープンさせました。若き情熱と宝石への愛、挑戦を恐れない心意気、家族からのたゆまぬ協力により、創立以来、 “ジュエリーの創造と販売に専念するメゾン” として、今日でも美しい作品が生み出され、店舗もヴァンドーム広場22番地に構えています。そのプライベートサロンは、その100周年を記念し改装され、全く新しいブテックに生まれ変わったという歴史があります。

展覧会は、4つのテーマに分かれて作品が紹介されていました。

1つ目のテーマ、「自然のスピリット」-自然のモチーフは1920年代に登場して以来、愛情をこめて慈しみ、賛美してきた象徴的なテーマとされています。実在のものから想像上のものまで、花々と動物たちが、常に姿を変えて進化する様子を数多くの作品に表しています。ポピー、バラ、カメリア、蘭、楽園の小鳥たち、ツバメ、蝶、グりフォン(鷲の上半身に、ライオンの下半身を持つ伝説の生き物)など。このようなジュエリーは、 “動き” と “変容” という概念を表現しています。蝶はまるで中に浮いているかのようにその姿を現し、鳥たちは空中で羽ばたいているかのようです。プラチナや金の地金とダイアモンド、ルビー、ブルーサファイア、エメラルド、真珠などを上手に組み合わせたものは、自然を限りなく優雅に、そして愛らしく模倣された作品に仕上がっています。

2つ目のテーマ、「エレガンスのスピリット」-長年にわたりオ―トクチュールの世界と密接に関連してきたことから、色彩、上質な素材、アール デコ時代の芸術的なインスピレーションが源となって作品に反映されてきました。イブニングバック、ミノディエール(手のひらサイズの小さなバッグのこと)、リボン、レース、クロディーヌカラ―、タッセル(房飾り)、蝶結び、ボタン、ゴールドメッシュ(金網目)などは、卓越した技術のシンボルでもありました。熟練した職人たちの優れたクラフツマンシップによって、布地がジュエリーに、ジュエリーが布地へと変貌し、この上ない優雅な作品です。ダイアモンドをちりばめた金とプラチナ製のレース状の作品は、風に吹かれる本物のレースのような印象を受けました。

3つ目のテーマ、「冒険のスピリット」-異文化からインスピレーションを受けた作品群です。古代東洋の魅力は、20世紀を通してフランス人を魅了してきました。特にアール デコ時代と1970年代は、その傾向は顕著でした。モチーフは、エジプト、インド、中国、日本からと、様々な特徴をジュエリーで表現しています。素材はエナメル、宝石は、翡翠、さんご、オニキス(正式名:ブラックカルセドニー)なども扱われています。1920年代に見られた、カルティエの東洋的な作品に似ている印象を受けました。

4つ目のテーマ、「インカーネーション(美の化身)」-ヴァン クリーフ & アーぺルのジュエリーは、セレブリティーが集まる数多くの機会に登場しています。マレーネ ディートリッヒ、エリザベス テイラー、モナコ国のグレース王妃、マリア カラスなど王妃、上流階級の女性たち、著名人たちの身を飾った作品が展示されていました。

全体の作品を通しての印象は、 “優雅” という言葉が最もふさわしいものが、ヴァン クリーフ & アーぺルではないかと感じました。注目の石留め法は、1933年に登場した、地金を全く見せずに、宝石だけが並べられているかのように見える、 ”ミステリーセッティング” は見事でした。石と石の間に地金が見えない分、花びらなど柔らかいものを表現するには、まさにふさわしい技法と思います。