パウル・クレー 展

東京国立近代美術館で開催された、「パウル・クレー おわらないアトリエ Art in the Making 1883-1940」 展を見ました。

クレーの作品というと、濃紺の背景に発色の豊かな様々な色を使い描かれているという印象が強い。真近で見ると、その色使いは、キラキラと光輝いて見え、鑑賞者を圧倒させます。" The Golden Fish " という作品を初めて見た時にそう感じました。それ以来ずっと心に残る作品です。この作品に再会できるかと期待しておりましたが、残念ながら、展示されておりませず。

花ひらいて 1934年 パウル クレー作
花ひらいて 1934年 パウル クレー作

この展覧会は、クレーの絵画作品を見せるだけのものではなく、作品ができるまでの制作過程、理論、哲学に焦点をおいて展示されたものでした。それは、彼の考える造形理論の根本にある、" 作品が作られる過程をも伝える " ことに基づいています。会場に入ると、6つのテーマに分かれて展示されています。はじめは、彼のアトリエ、住居に残された写真に記録された作品が展示されています。試行錯誤をしながら制作に取りかかる姿が伝わってくるようです。第2から4までのテーマでは、具体的な制作技法が伝えられていきます。素描から油彩に転写されていくもの。完成された作品を分割して、回転させ、そしてもう一度貼り合せるもの。また、分割して、切り分けたものそれぞれがひとつの作品になるもの。キャンバスの両面に描かれたもの。表と裏が密接に関連している、2次元の空間で終らずに、3次元で表現されています。時にはその作品の題材の中の時間を発展させた4次元に渡り表現されたものもあります。この造形理論をとらえた特徴的作品が、 ”花ひらいて(Bluhendes)” ではないでしょうか。クレーは、1925年に、 ”花ひらく木(Bluhender Baum)”  という1枚の絵を描き、1934年に、 ”花ひらいて” を新たに描いています。しかしこの絵は、 ”花ひらく木” のキャンバスを回転させ完成させたものですが、微妙に変化する自然の風景が読みとれます。この絵の裏側は、タイトルは無題として、全くタッチの違う画風で、土に埋まる木の根元が描かれています。瞬間をとらえた絵画作品にとどまらず、時間の過程までも作品にする考えは、非常に興味深いと思いました。最後のテーマは、クレー自身が、特に大切にしていた作品の展示です。参考作品として手離さずにしたものや、家族のために描いたものです。

私自身は、 ”The Golden Fish”  ほどに強烈に印象に残った作品はありませず、作品を見たというよりは、制作過程に重点をおいて、展覧会を楽みました。

闘っているポップとロック 1930年 パウル クレー作
闘っているポップとロック 1930年 パウル クレー作

この日は、家族と共に美術館に足を運べたことが何よりでした。難しい理論は横に置いて、見終わった後、どの絵が印象的だったかを話していましたら、私以外は、 ”闘っているポップとロック(Pop und Lok im Kampf)”  は、愉快だったと意見が一致!この作品は、最後のテーマの中で展示されていました。音楽家の家に生まれたクレーは音楽を題材にした絵画も多く、これは、ポップとロックミュージックを題材にした作品ではないかと考え、そう思ってもう一度この絵を見返すと、より面白く見えてきました。

※ 以上2点の画像は、「パウル・クレー おわらないアトリエ Art in the Making 1883-1940 」展 カタログより拝借しました。